オリュンピュア財閥企業防衛局によって立案された、大規模な捕捉・封鎖作戦。
作戦名は、ギリシア神話に登場する巨人の狩人、
オリオン(Orion)
に由来する。
作戦の目的は、標的を単純に攻撃することではない。
対象の位置を特定し、
通信を断ち、
退路を制限し、
支援者との接続を切り、
最終的に、
「逃げる」という選択肢そのものを失わせること
にある。
そのため《Operation Orion》は、オリュンピュア企業防衛局の三部門を横断する統合作戦として設計される。
ヘルメスが獲物を見つける。
アイギスが狩場を閉じる。
ネメシスが仕留める。
極めてオリュンピュアらしい、
「狩猟」
である。
狩人オリオン
ギリシア神話におけるオリオンは、並外れた能力を持つ巨人の狩人として知られる。
その最期については複数の伝承が存在するが、その中には、
巨大な蠍によって命を落とした
とするものがある。
後にオリオンと蠍は、それぞれ星座として天へ上げられたとされる。
天空では両者は互いに離れた位置にあり、
一方が空へ現れる頃には、もう一方が沈んでいく。
この神話的構図は、
狩人と獲物の位置が固定されたものではない
ことを象徴する。
表向きの意味
オリュンピュア側が《Orion》という名称へ込めた意味は単純である。
標的を見つけ、追い、囲い込み、仕留める。
つまり、
自分たちこそが狩人である
という宣言である。
作戦立案時点では、蠍の寓意は重要視されていない。
あるいは、誰もそれを問題とは考えなかった。
そのこと自体が、後の皮肉へつながる。
三段階の狩猟
《Operation Orion》は、企業防衛局の思想を極めて純粋な形で実装する。
ヘルメスは、
対象の位置、人間関係、情報経路、行動傾向を解析する。
必要に応じて偽情報を流し、標的を「狩場」へ誘導する。
アイギス・ガードは、
通信、移動、認証、退路を制御する。
対象が利用できる選択肢を一つずつ消去し、狩場そのものを閉じる。
そして、ネメシス が残された対象を物理的に制圧する。
つまり、
見つける。
囲う。
終わらせる。
という作戦である。
OrionとTINA
この作戦は、軍事・治安作戦としてのTINAとも言える。
標的へ、
「もう逃げ道はない」
という状況を作る。
右へ行けない。
左へ行けない。
通信できない。
援軍も来ない。
最後には、オリュンピュアが用意した一つの結果だけが残る。
この意味で《Operation Orion》は、
There Is No Alternativeを戦術へ変換した作戦
でもある。
しかし、蠍がいる
《Operation Orion》最大の問題は、
標的が、
自分を獲物として扱われていることを理解した
ことである。
思考の森側は、包囲されることそのものを避けようとはしなかった。
むしろ、自分たちを囮として利用した。
相手が獲物を囲うのであれば、
その包囲網を完成させればよい。
完成した瞬間、オリュンピュア側自身も、
「そこへ集まる」
という一つの行動へ収束しているからである。
狩人が獲物の行動を限定したつもりで、
実際には、獲物によって狩人の行動が限定されていた。
ここで、オリオンと蠍の関係が反転する。
《Blunder》
この反転が表面化するエピソードが、
《Blunder》――大悪手
である。
オリュンピュア側の誤りは、
戦力不足でも、
情報不足でも、
装備不足でもない。
むしろ逆である。
作戦が合理的すぎた。
対象を追い詰めるための最適解を選び続けた結果、
自分たちの行動まで予測可能になった。
思考の森側は、その予測可能性を利用する。
つまり《Blunder》とは、単なる失策ではない。
「完全に合理的な判断を積み重ねた結果、
もっとも大きな間違いへ到達した」
ことを意味する。
「蠍」は作戦名ではない
蠍は誰かが名乗るものではない。
オリュンピュア側が、
「我々はオリオンだ」
と名乗った瞬間、神話の側が勝手に蠍を連れてくる。
無線呼称
Pointer / Setterは獲物の所在を示す猟犬。
Pitbullは捕捉・拘束・近接制圧。
つまり作戦内部のコールサインまで、
「人間狩り」の語彙
で統一されている。
Operation Orionは、狩人の名を冠した作戦である。
獲物を追い、逃げ道を塞ぎ、選択肢を奪い、最後の一点へ追い込む。
その設計に誤りはなかった。
ただ一つ、設計者たちは忘れていた。
オリオンの神話には、最初から蠍がいる。
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