オリュンピュア財閥 企業防衛局(Olympeia Security Bureau) に属する強制執行・特殊介入部門。
最高責任者は、デイモス・“Liquidator”・クロス(Deimos “Liquidator” Cross)
組織の合言葉は、
「コストを最優先せよ。」
ネメシスにとって、作戦とは英雄的行為でも、戦争でもない。
投入された人員、時間、資源、政治的影響、情報露出などを含めた総損失を計算し、
もっとも安価な方法で問題を終了させること
である。
原義――ネメシス
ネメシス(Nemesis)は、ギリシア神話において応報や分配、過度な傲慢に対する報いと結びつく女神。
単純な復讐の神というより、
「越えてはならない均衡を越えたものへ、相応の結果を返す存在」
として理解される。
オリュンピュア財閥における名称も、この発想を歪んだ形で継承している。
ただし、誰が「越えてはならない線」を決めるのか。
その答えは当然、
オリュンピュア財閥自身
である。
したがってネメシスが執行する「応報」は正義ではない。
企業秩序から逸脱した対象に対する、企業自身による清算
である。
「コストを最優先せよ」
デイモスにとって、この標語は単なる経費削減を意味しない。
人的損失。
弾薬。
輸送。
作戦時間。
証拠処理。
情報漏洩。
外交的摩擦。
後処理。
そして対象を生存させ続けるための費用。
そのすべてが「コスト」である。
したがってネメシスの判断は一見すると極端に冷静である。
怒りによって報復を拡大することもなければ、名誉のために不必要な戦闘を続けることもない。
しかし、この合理性には致命的な欠落がある。
人間の生命そのものを、計算から除外する原則が存在しない。
生命もまた、評価項目の一つにすぎない。
暴力装置 Violence Apparatus
ネメシスに属する武力介入部門。
財閥の利益を阻害する武装勢力、犯罪組織、傭兵部隊などに対する直接的な強制介入を担当する。
また、オリュンピュア財閥にとって有利な状態を維持する目的で、紛争地域への介入や要人排除など、企業警備の範囲を明らかに越えた活動に従事することもある。
表向きには存在しない。
活動記録も通常の企業文書には残されない。
しかし関係者の間では、
「デイモスが現場へ出る前に、その場所を片づける部隊」
として知られている。
かつて複数の犯罪組織がオリュンピュア財閥の利権へ直接抵抗した際にも、この部門が投入されたとされる。
その後、その組織の活動記録は急速に途絶えた。
オリュンピュア側の公式記録には、
「契約上のリスクは解消された。」
とだけ残されている。
崩国機関 Augustine Global Risk Management
ネメシス傘下に存在するとされる特殊工作部門。
表向きには、
Augustine Global Risk Management
という国際的リスクコンサルティング会社を名乗っている。
政情分析、企業危機管理、紛争リスク評価、要人警護などを扱う、一見すれば普通の民間企業である。
しかし「崩国機関」と呼ばれる内部部門の本来の任務は、
国家、行政組織、企業、権力者などの意思決定構造を内部から崩すこと
にある。
直接的な軍事占領を目的とはしない。
むしろ、
内部対立、
経済的不安定、
権力闘争、
社会的信用の喪失、
など、すでに存在する弱点を利用し、
対象が自ら崩壊する条件を整える。
暴力装置が「外から壊す」部門なら、
崩国機関は、
「内部から立てなくする」
部門である。
ブラックリスト
デイモス・クロスは、自らが関与した案件を記録した非公開データベースを所有している。
通称、
「ブラックリスト」
そこには、
対象、
案件番号、
投入資源、
処理時間、
損失、
最終状態
などが記録されているとされる。
しかし、そこに恨みや感想は記されない。
デイモスにとってブラックリストとは戦歴ではない。
勲章でもない。
単なる、
清算済み案件台帳
である。
国一つの政治構造が崩壊した案件であっても、彼の記録上では他の案件と同じ一行に収まる。
それが彼の異常性をもっともよく表している。
《エニュオ》との関係
デイモスが携行する特殊制圧棍、
《エニュオ》
は、ネメシスの思想を個人装備へ縮小したものといえる。
ネメシスという組織が、
社会・組織規模の清算機構
であるなら、
《エニュオ》は、
個人単位の清算機構
である。
だからデイモスは《エニュオ》を「武器」とは呼ばない。
彼にとっては、
処理器具
なのである。
アイギス・ヘルメス・ネメシス
ヘルメスは、
何が現実として認識されるかを操作する。
アイギス・ガードは、
その現実の中で許される行動を制限する。
ネメシスは、
それでも残った問題を終端処理する。
つまり、
ヘルメスは「敵」を定義する。
アイギスは「敵が動ける世界」を消す。
ネメシスは「残った敵」を清算する。

