聖女たる魔女
アイガイオン・タワー内部、ラボラトリー・セクション。
まるで中世の大聖堂を思わせるような、荘厳でありながらも、禍々しさが共存する科学実験区画である。
そこにはクリスタル状の子宮を連想させる巨大な装置が鎮座し、女性のみの科学者が慌ただしく計器の数値をチェックし、調整パネルを操作している。
「――順調のようね」
エリス・ヴェイン――稀代の電脳の魔女である。
「オール・グリーンです。問題はありません」
セクションを束ねる科学者の一人が、そうエリスに答える。
「愛おしいわね――これが母の心境なのかしら」
「――厳密にいえば、エリス様は生体上の母体に該当します」
エリスはその回答に然したる感慨を覚えない。
むしろ、クリスタルの向こう、生命の息吹に震える『御子』に魅入られている。
「美しいわ――」

禁忌の生命。
生まれてはいけない存在と知りながら。
その行為に手を染めることは罪なのか。
エリスは考える。
――まさか、馬鹿馬鹿しい。
罪などというものは、他者を定義づけるだけのレッテルに過ぎない。
罪を罪と決める権限は、この世にありはしないのだから。
この文章のそばに、灯りを。
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