原義
アイギス(Aigis / Aegis)とは、ギリシア神話に登場するゼウス、あるいは女神アテーナーに属する神聖な防具。
盾、胸当て、山羊皮など、その形状については複数の伝承が存在する。
ゼウスの雷霆や嵐、アテーナーの守護と結びつき、敵を威圧し、邪悪や災厄を退ける神具として描かれる。
後世の英語 aegis も、
「保護」「庇護」「防護」
を意味する言葉として用いられる。
オリュンピュア財閥は、この名を単なる盾ではなく、
「攻撃そのものが成立しない状態を作るもの」
という意味で再解釈している。
絶対防壁《イージス・コア》
タロス・“Immutable”・グレイヴスが使用する統合防衛管制装置。
アイガイオン・タワーを中心として、旗艦オケアノスを含む海洋防衛網、都市認証基盤、監視・迎撃設備などを統合制御する。
外観は、黒曜石を思わせる半円形の巨大演算卓。
複数層の鍵盤状制御盤と、タロスを取り囲む環状インターフェースによって構成されている。
しかし、その鍵盤は通常の意味で「命令を入力する」ためのものではない。
数千から数万に及ぶ同時並行の防衛系統を、
一つの秩序として認識するための思考補助装置
である。
タロスとの神経接続
《イージス・コア》はタロスの脳波および神経活動と常時接続されている。
タロスが、
「この区画を封鎖する」
と一つずつ命令する必要はない。
彼が、
「この人物はここへ到達してはならない」
と認識した瞬間、その条件を成立させるため、
扉、
昇降機、
照明、
空調、
通信、
監視網、
警備員、
無人兵器、
認証権限、
避難経路、
などが同時に再編成される。
つまり《イージス・コア》は、タロスの思考を、
環境そのもの
へ変換する。
鍵盤――防壁の演奏
タロスが両手を鍵盤へ置く行為は、操作というよりも演奏に近い。
数千の設備。
数万のセンサー。
無数の認証状態。
それぞれは独立した音である。
タロスはそれらを、
一つの楽曲として統率する。
一つの扉を閉じるだけでは防壁にならない。
廊下を塞ぐだけでもない。
通信を切断する。
逃走経路を変える。
使用可能な権限を剥奪する。
室温を変える。
照明を落とす。
別区画へ警備員を誘導する。
対象人物が取り得る選択肢を、一つずつ消していく。
そして最後に残るのは、
「侵入できない」ではなく、「侵入という行為そのものが成立しない状態」
である。
タロスの防御思想
タロスにとって防壁とは、物体ではない。
条件である。
彼は城壁を厚くすることだけを防御とは考えない。
敵が存在するなら、
敵が使用できる扉をなくす。
敵が通信するなら、
通信先をなくす。
敵が身分を偽装するなら、
身分情報だけでなく存在そのものを照合する。
敵が突破方法を探すなら、
突破方法を試せる環境そのものを消す。
だから彼は言う。
「防壁とは、敵を拒む壁ではない。
敵が存在できない条件そのものだ。」
「認証」という思想
《イージス・コア》にとって、人間はまず、
認証対象である。
誰であるか。
何を許可されているか。
どこへ移動できるか。
何へ接続できるか。
そのすべてが照合される。
したがって、
「本人らしく見える」ことにはほとんど意味がない。
ここでアルティア・ヴェイル/Cahierとの思想的対立が生じる。
アルティアは、
認識されれば、その人物として存在できる。
タロスは、
認証されなければ、その人物として存在できない。
と考える。
人間を見る者と、
人間を識別する者。
この違いが、両者の衝突の本質となる。
イージス・コアの限界
ただし、《イージス・コア》は万能ではない。
タロスは、
存在する防衛資源を完璧に近い形で統率できる
のであって、存在しない設備や情報まで作り出せるわけではない。
センサーが観測していないもの。
ネットワークから切断されたもの。
想定そのものが存在しない事象。
意味づけの基盤そのものを変更された対象。
これらには弱点が生じる。
ここでレオ・ケレスが極めて危険な存在になる。
タロスは、
「この対象をどう扱うべきか」
を完璧に制御する。
レオはその一段下へ潜り、
「そもそも、その対象は何として扱われているのか」
を書き換える。
だから《イージス・コア》に対するレオの攻撃は、壁を破壊する攻撃ではない。
壁に、自分が壁であることを忘れさせる攻撃
に近い。
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